本屋の新聞 バックナンバー
| 2006年11月15日発行 本屋の新聞 65号 |
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| 『ブラバン』 津原泰水‖著 バジリコ 1680円 『パパとムスメの7日間』 五十嵐貴久‖著 朝日新聞社 1785円 『ありふれた魔法』 盛田隆二‖著 光文社 1680円 |
------------「予想外」な時代である。 「おじさん」である。 娘の同級生からは「○ちゃんのお父さん」などと呼ばれていたのはいつのことか。近頃じゃ誰からもそう呼ばれるようになってしまった。40ともなればありがたくもない称号を戴いてしまうのもしかたないのだけれど、呼ばれた当人にしてみれば、これが案外予想外だったりして、ショックだったりする。 『パパとムスメの七日間』の主人公は、さえない「おじさん」。四十七歳の中間管理職と十六歳の女子高生の娘、ふたりが入れ替わってしまう物語である。まあどこかで聞いたことのあるような設定だけれど、そこはホラーから青春小説まで多芸な五十嵐貴久、一味違う話運びで面白い。 ムスメの代わりに憧れの先輩とデートするパパ。パパの代わりに会社に行き社長を目の前にプレゼンに臨むムスメ。それぞれの難局をどう乗り切っていくのかが、読みどころ。普段は口も利かなかった父娘が、うまく絡み合って、「そうくるか」と、思わず笑ってしまう。ユーモラスでテンポもいい、すっきり読める家族小説である。 「セカチュウ」以来純愛小説ブームが続いているけれど、「おじさん」だって心はざわめく。『ありふれた魔法』もまた40代の物語。まじめ一筋の44歳の銀行の支店次長が、人生が狂うほどの恋に落ちてしまう話である。 あるとき、それまで意識しなかったのに意識してしまう瞬間というのがある。十八歳も下の部下を愛おしく思いながらも、それがなかなか踏み切れない。仕事や家庭、そもそも恋愛自体が無縁の年齢が邪魔をする。「リアリズムの名手」と言われるだけあって、そのあたりのせつなさと苦しさともどかしさが丁寧に描かれていて読ませる。 月四万円の小遣いのサラリーマンに、作者は競馬のビギナーズラックによる密会資金を与えてしまう。そして一線を越えてしまった二人。恋の嵐の中をどこに向かって進んでいくのか。少々身につまされる部分もあって、慄いてしまった。 『ブラバン』は、高校時代の吹奏楽部の仲間たちが、四〇を迎えてバンドを再結成する物語。 40代にとっては青春真っ盛りだったあの頃、八〇年といえば大麻所持のポールが歌うことなく成田で送還され、ジョンが銃で撃たれこの世を去った年である。懐かしい部活小説のふりして、実はシビアな話でもある。瑞々しい時代から、変わってしまった部分と変わらない部分、過去と今を行き来しながら語り、それぞれの生きることのひりひりとした痛みを描ききっていく。34人にも上る登場人物を数える群像劇は、どこか自分の人生とも重なり合い、沁みてくる。圧倒的な筆力に、脱帽。今年の本屋大賞『東京タワー』もびっくりの今年の個人的ナンバーワンにしたいと思う。 プロ野球が「シンジラレナ〜イ」で終わったかと思ったら、ケータイは「予想外」で始まった。「いじめ」による子どもたちの自殺が突如問題化したかと思えば、核保有を議論しようと言い出す人まで現れた。 世の中は予想外なことばかりが続いている。ついこの前まではみんな「想定内」なんて言ってたのに、時代はなんて変わり身が早い。「おじさん」はついていけない。…って自分で言ってちゃ世話ないけど。(は) |
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| 『四度目の氷河期』 荻原浩‖著 新潮社 1890円 |
-------------今日まで、そして明日から 小さい頃からワタルはいつも思っていた。まわりのみんなと自分はどこか違う。それは父親が不在だったことだけじゃない。未婚の母は遺伝子研究所で働いていて、町の人々からは白い目で見られていた。だからといって決定的な理由じゃない。それを知ったのは小学校五年の夏、父親についての重大な秘密。それは自分にも関わる、みんなと違う決定的な原因だった。 まだ見ぬ父親に思いを抱き、誰にも言えない自分の出生に振り回されながら、ワタルの孤独な戦いがはじまる。学校でのいじめ、近隣住民からの嫌がらせ、母親の死などを乗り越えワタルは逞しく成長する。 表題からSFものかと思ったら、そうでもない。ワタルという少年の十七年と十一ヶ月を描いた、それでもちょっとフツーじゃない壮大にして、繊細な物語。(中) |
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| 『恋愛寫眞 もうひとつの物語』 市川拓司‖著 小学館 1365円 |
-------------大切な時間 現在公開中の映画「ただ、君を愛してる」は本書が原作となっている。もともと、映画「恋愛寫眞」へのオマージュとして書き下ろされた作品からか、登場人物の設定がリンクしている。 キャンパスのマドンナ的な存在みゆきに恋をする主人公・誠人(まこと)。そんな気持ちを知りながらも誠人に思いを寄せている静流(しずる)。静流は、彼の恋を応援しながらも、自分の気持ちも一生懸命にアピールしていく。共通の趣味であるカメラを通して、徐々に二人の心の距離は縮まっていくように見えた。だが、誠人にはみゆきという存在があり、自分の事を最大限に理解してくれる静流になかなか気が付かない。自分の気持ちの行き先がわかったときには静流は…。 幸せな時間と言うものは、過ぎ去ってからはじめてその大切さに気づくもの。恋愛の難しさを教えられたと同時に、僕も今の幸せな日々を大切にしていこうと心に決めた。まずは彼女と一緒にこの映画を見に行こう!(田) |
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| 『若者はなぜ3年で辞めるのか?』 城繁幸‖著 光文社新書 735円 |
| -------------明るい未来をこの手に 私も、豊川堂へ入社して満10年が経った。今思えば、私の回りでも入社2、3年で会社への不満、将来への不安感を理由として転職をした友人もいた。 毎年増加を続ける「新卒離職者」は3年で3割といわれる。最初からやりたいことが出来ないという考えの甘さ、忍耐力のなさが大きな要因となっているようだ。定期昇給または昇格が止まり、いつリストラされてもおかしくないという不安を抱え、仕事に対するモチベーションを失った30代。そんな上司を見て悩む若者たちに、本書では成功者の事例を出し、今やるべきことは何か、向かうべき方向をそっと気付かせてくれる。 しかし、この一冊で全ては解決しない。辞めるか、とどまるかはあなたが決める。 最後は自分自身で切り開くのだ。(川) |
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| 『戦国一孤独な男』 童門冬二‖著 NHK出版 1575円 |
-------------ブサイクな凄い奴 来年のNHK大河ドラマは「風林火山」。原作は井上靖の代表作の一つで、武田信玄の軍師・山本勘助の半生を描いている。本書は童門冬二が多くの資料を基に、勘助の実像に迫った歴史小説である。 五十過ぎの小柄で色黒く、片目が無くて片足も悪い男・勘助。今川領内で無為の時を過ごしていた彼に光明が射す。甲斐の武田晴信(後の信玄)よりの召抱えの沙汰である。諸国を廻り怪我の代償に得た情報・軍略・築城の知識を財産に甲斐へ。見かけに囚われず、彼の才能を最大限発揮させる晴信。ふたりは信濃への侵攻を図りつつ、武田家の古き体制の変革を模索する。晴信の庇護の下、反対勢力を押し退け着実に組織を変貌させてゆく勘助。やがて彼らに天下取りの野望が芽生える。そして運命の川中島へ…。 参州[三河]加茂(現豊橋市賀茂町)の出身とも云われ、地元では既にアピールの準備が着々と進む。豊橋は市制百周年の今年に続き、来年は大河ドラマフィーバーとなるか?(え) |
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| 『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』 深谷圭助‖著 すばる舎 1575円 |
-------------子どもって、やるじゃん! 本についている帯の写真を見て、まず驚いた。付箋の付いた辞書を子どもが食い入るように調べている。辞書の厚さは2、3倍にも膨れ上がり、今にも弾けそうだ。 小学校低学年は(言葉の吸収力)がピークに達する大切な時期。著者は「まだ早すぎる」と言う周囲の非難を浴びながらも、1年生に国語辞典を持たせた。言葉を手がかりに自ら学び考え、答えを導き出す面白さを体感させる。調べる事を習慣として身に付けさせ、あらゆる学習の礎とする事を目的とした。結果、帯の写真のように子どもたちは、予想を上回る成遂げた。学ぶ意欲の高い時期にキッカケを与えてやり、それを支援していくのが真の教育だと言う。 好きなものにハマった時の子どもの吸収力というのは、確かにスゴい。プロ野球チップスのカード集めに飽き足らず、『プロ野球選手名鑑』を愛読しているわが息子。そー言えばいつのまにか、(敬遠)という漢字を覚えていた。これも大切なキッカケか?(伊) |
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| 『削除ボーイズ0326』 方波見大志‖著 ポプラ社 1470円 |
-------------Kコウモリ・M命名・Dデジトカゲ 小学校生活残り7ヶ月。思春期直前のピュアな心を持つ主人公グッチと仲間達。学校での派閥争い、いじめ、複雑な家庭事情が絡みながら、友情、恋が芽生えていく。 ある日、グッチ達はフリマで高校生に囲まれている不登校だったクラスの女子、浮石を助けた。それを見ていた謎の「フリマおっさん」からデジカメに似た削除装置KMD(DELETEボタンを押すと、押した人間に起きた出来事3分26秒間が削除できる。)をもらった。 初めて削除したのは深爪だった。その後、次々と出来事を削除していくが、グッチはシャーペンの芯が折れてもKMDを使うくらい頼り切っていた。そんな時、グッチの何気ない一言が浮石の女心を傷つけた。傷つけられた心は向かい合ってかい合って解決すべきなのに、それを削除しようとした。しかし親友ハルの男気は許さなかった。そしてKMDは封印されることになった。 クライマックスを迎える最大の事件で、小学生達はどのように立ち向かったのか、封印されたKMDと彼らの運命は…。 26歳の著者が描く、女子にモテたい少年達の青春友情ミステリー。第一回ポプラ社小説大賞受賞作。 秘密の基地を作って遊んだ思い出が蘇る。そんな少年の心を持ったあなたへの一冊。(大) |